「きもの十日町 50年の歩み」より 織物の起原(1)

 衣食住の三要素は、人間の暮らしの基本で、その起原は人類の歴史と共に悠遠であり、衣生活の中心をなす織物の歴史が古いのも当然である。
 人間が最初に身にまとった衣料は、獣皮や魚皮、鳥の羽根などといわれているが、やがて植物の繊維が最も多く使われるようになった。
 その植物繊維も初めは入手しやすい藤、殻(カジノキ)、楮、科の木、などの樹皮繊維が多かったが、樹皮は繊維が堅くて加工しにくいので、やがて使いやすいからむし、イラクサ、アカソなどの草皮繊維が主体になったといわれている。
 また、動物性の繊維としてはヤママユ(天蚕)やクリムシ(栗虫)などの野蚕が早くから利用されていた。
 これらの繊維を素材とした原始時代の衣料は、製法によって二つのタイプに分けられる。ひとつは、ヨリを編んで布にする編み布であり、もうひとつは、タテ糸とヨコ糸を交互に交差させて布に織り上げる織り布である。いわゆる編物と織物で、織物は、タテ糸を一斉に上下に分けてヨコ糸を通すための綜絖という開口具が発明されてはじめて織る事が可能になるので、発生的には織物よりも編物の方が古いとされている。

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