織物生産工程 十日町市博物館常設展示解説書より(1) 織物の始まり

 衣服とは何なのでしょう。その起源については多くの説がありますが、それを整理すると大体次のようにまとめられます。
①.身体を保護するため
②.羞恥心のため
③.虚栄心のため
④.異性をひきつけるため
です。

 しかし、これらの説も単独では問題があり今のところ、「虚栄心」や「異性のひきつけ」として始まり、これに「身体の保護」が加わったのではないかと考えられています。
 狩猟採集時代の人類は、獣皮や魚皮、鳥の羽などを衣服として身にまとっていたようです。その後、植物の繊維を利用するようになり、初めに縄や編物が作り出されました。そして農耕を中心とする生活に変わった頃、織物が発明されたといわれています。それは家にいた女性たちでした。当時の様子は、遺跡からの遺物で知ることができます。

 世界でもっとも古い織物は、今のところエジプトで発見された約6.500年前の亜麻布だといわれています。日本でも、縄文時代の始めころ(約7.000年前)にはすでに編物があり、縄文後半および弥生時代(約2.500年前)には織物がありました。静岡県の登呂遺跡からは、原始的な織機の部品や織物の残片が出ています。

 この地方では、約1.500年前の馬場上遺跡(博物館敷地)から糸に撚りをかけるときにつかった紡錘車(ツム)が出ています。また、織物の跡がついている土器も発見されました。奈良の正倉院には、約1.200年前のこの地方の越後布が、宝物として保存されています。

 このように、人間の皮膚の延長として始まった衣服は、織物として次第に形をととのえ今日に至りました。そして目的や場所、意志や希望によっていつでも取り替えのできる「第2の皮膚」になりました。今ではファッション化して使い捨てられていく織物ですがこうした歴史がかくされているのです。

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